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地方自治体の財政難:「基準財政需要額」 計算式の見直しが必要!

  • 執筆者の写真: Hirokazu Kobayashi
    Hirokazu Kobayashi
  • 3 日前
  • 読了時間: 4分

小林裕和

(株)グリーン・インサイト・代表取締役/静岡県立大学・名誉教授・客員教授

 




私は静岡県立大学で定年退職を迎え、その後も静岡県に住んでいる。静岡県は財政難だと言う。そこで、静岡県財務諸表 (財務部財政課, 2025年10月) を調べてみると、実態が見えてくる。これから計算すると 「将来負担比率」 が234.1% (2024年度) になる。

 

将来負担比率 = (将来負担額 − 充当可能基金額 − 特定財源見込額 − 地方債現在高等に係る基準財政需要額算入見込額)/(標準財政規模 − 算入公債費等の額)

 

将来負担額:地方債や債務負担行為等の将来の負担額

充当可能基金額:将来の負担に充てることができる基金の残高

特定財源見込額:将来負担の充当に充て得る特定財源の見込 (国庫支出金、使用料・手数料、分担金・負担金等)

地方債現在高等に係る基準財政需要額算入見込額:臨時財政対策債 + 交付税算入率が高い地方債

標準財政規模 = 標準税収入額等 + 普通交付税額 + 臨時財政対策債発行可能額

算入公債費等:交付税で補填される地方債償還相当額

普通交付税額 = 基準財政需要額 − 基準財政収入額

基準財政需要額:後述 (これがキーワード)

基準財政収入額 ≒ 標準的な地方税収入の75% + 地方譲与税等

地方譲与税:国税として徴収された税収の一部を、一定の基準に基づいて国から地方自治体に配分する税

下線:国税を原資とする財源 イタリック体:部分的に国税を原資とする財源

 

そこで、全国の将来負担比率を見てみよう (公開資料を基に再計算した参考値)。

 

将来負担化率 (2023年度)

全国(都道府県):172.9%

静岡県:242.5%

 

高い道府県

兵庫県:338.8%

北海道:326.9%

新潟県:326.7%

京都府:292.9%

 

低い都県

千葉県:140.1%

神奈川県:114.6%

東京都:23.6%

 

将来負担比率の計算式において、下線部の財源が国から来る点に注目して欲しい。これには、各都道府県ごとの基準財政需要額が適用される。この計算式では、人口、高齢者数、面積、道路延長、学校数などの項目が加味される。将来負担比率が低い東京都は、上記の普通交付税額の計算式において右辺がマイナスになり、交付税ゼロの不交付団体となっている。それでも、企業本社が集中しており、東京都が投じるインフラ等整備費に対して税収が多い。その他の道府県については将来負担化率と地方行政との因果関係が見え難いが、将来負担比率が高い県には、明確な共通項が挙げられる。すなわち、通過・供給型インフラを抱えている。静岡県は東京と大阪を結ぶ東海道物流の通過点、兵庫県は全国幹線の結節点、北海道は広大な面積、新潟県は日本海側物流の要である。さらに、京都府は観光・文化の全国供給拠点である。すなわち、これらのインフラ整備に資金が掛かるものの、それらの項目は基準財政需要額の計算式において加味されていない。基準財政需要額の計算式は見直し可能とされながらも、その大枠は1960年代に基本構造が成立。その後も部分改訂・補正係数の追加は行われているものの、現状に沿った基準財政需要額計算基準の大幅な見直しが望まれる。

 

一例として、新東名高速道路は、静岡県区間が3車線で整備されている。一方、愛知県区間は2車線である。これは、静岡県が全国物流や災害対応を支える国家的幹線として、より大きな役割を担っていることの表れである。高速道路本体の建設費は国と高速道路会社が負担しており、県の直接的な財政負担は限定的である。しかし、防災対応の観点から静岡県の意向が設計段階に反映され、ヘリポートの整備などが行われた。静岡県は周辺インフラを通じて間接的な負担を負っていると言える。すなわち、基準財政需要額によって一定の補正はなされているものの、通過・供給型インフラがもたらす構造的負担を適切に評価しているとは言い難い。現在政府内で議論されている積極財政の観点からも、基準財政需要額計算基準の見直しが急務であると考える。

 

脚注:数値整理および制度構造の確認には、生成AI (ChatGPT 5.2) を補助的に用いたが、最終的な解釈および責任はすべて筆者に帰属する。




 
 
 

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© by Hirokazu Kobayashi, Green Insight Japan.

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