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研究開発

結果が成功の証

1. 「光スイッチ」を用いたバイオ医薬品の生産 (「特許権を含む出願技術」 出願1)​

この技術は、シロイヌナズナを用いて小林裕和らが発見した機構 (Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2010) を基盤とする。「外来遺伝子特異的発現『光スイッチ』を用いた葉緑体エンジニアリングによる低価格バイオ医薬品生産」 が、第1回静岡テックプラングランプリ [(株)リバネス主催] において 「ヤマハ発動機賞」 を受賞 (2018年7月)。また、「人類の救世主 「光スイッチ」 による植物物質生産」 がアグリテックグランプリ2018 [(株)リバネス主催] において、ファイナリストに選考。事業化としては、植物成長管理統合環境制御システムを活用し、低価格抗体医薬品の生産を目指している。

バイオ医薬品生産において植物葉中の葉緑体を用いる利点は、(1) 動物培養細胞による生産より安価 (1/40と試算:タンパク質によるが多くは大腸菌よりも高生産)、(2) scalability:遺伝子組換え農作物が栽培できる場所があればよいため、市場に応じて生産規模を可変的に調節できる。(3) タンパク質に糖鎖が付かないため、ヒト由来タンパク質産物はヒトに対して親和性が高い。具体的には、販売実績が高く特許が失効する完全鎖抗体アダリムマブ [製薬名:ヒュミラ (関節リュウマチ治療薬)] に注目し、タバコ葉を用い、その一本鎖抗体 (single-chain variable fragment: scFv) の生産に成功している (35 mg/kg 新鮮重, Kd = 9.5 ×10-9 M)。この生産性の場合、ヒュミラの販売価格に換算して、年間6億円/万 m2 栽培面積となる。

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2. 耐塩性・耐乾性シバなどの作出 (出願2)

地下水灌漑により塩分が蓄積した農耕地は、世界の総計でアメリカ合衆国の国土面積に匹敵する。これらは雨量が少ない地域であり、農耕地に塩分が析出すると、耕作放棄以外の選択肢がなくなる。耐塩性遺伝子により、これら農耕地での栽培が可能な農作物やバイオエネルギー生産植物の作出が期待される。日本における身近な活用としては、耐塩性と耐乾性は表裏一体の関係であり、屋上や道路法面の緑化において、低潅水でも生育可能な植物の創出に活用できる。この観点から、シバの改良に焦点を当てる。米国農務省 (USDA) は、2017年1月に遺伝子組換え除草剤耐性シバ (Agrostis 属) を遺伝子組換え規制の適用外とした。

 

「発明の名称: 植物に耐塩性を付与するABCトランスポーター遺伝子」 は、シロイヌナズナを用いた小林裕和らの発見である stc (salt tolerant callus) 遺伝子群 (PLOS ONE, 2015) の1つであり、その強制発現により耐塩性が付与される。また、「発明の名称: 植物に環境ストレス耐性を付与するポリヌクレオチド」 の発端であり、シロイヌナズナ pst (photoautotrophic salt tolerance) 遺伝子群 (Plant Cell, 1999) は、それらの欠損によって耐塩性を発揮する。したがって、届出のみで販売が可能な 「ゲノム編集」 植物としての実用化が射程距離内に入る。これらの状況は、耐乾性シバの事業化への追い風となっている。

図 2. 耐塩性遺伝子 PST2 変異系統の表現型
 通常培地で3週間生育後、200 mM NaCl (海水の1/2弱の濃度) 含有培地に移し3週間培養

図 3. 黄化遺伝子 SUG の強制発現によるシロイヌナズナの表現型
黄化遺伝子 SUG (suppressed greening) のゲノム編集 (ノックアウト) による光合成機能強化への期待

3.「黄化遺伝子」のゲノム編集による光合成機能の強化 (出願4)

「ゲノム編集」 食品は、2019年より厚生労働省への届出のみで栽培・販売が可能となった。このような時代的背景を踏まえ、新たな遺伝子の導入や既存の遺伝子の発現強化ではなく、「ゲノム編集」 を用いた数塩基の変異導入により、「光合成抑制遺伝子」 を破壊する。これにより、光合成機能が促進し、植物生産性の増強や機能性成分の含量増加が期待される。この実用化を図る。

シロイヌナズナを用いて緑化抑制に関与する遺伝子 sug (suppressed greening) を発見し、これらの遺伝子をノックアウトすることで植物の光合成活性を高めることができた。植物由来の機能性成分やバイオ燃料の生産性を高めるために使用できる。この技術は 「発明の名称: 光合成抑制遺伝子およびその用途」 および 「発明の名称: 緑色カルス細胞の製造方法」 として、それぞれ特許登録および特許公開されている。

4. 発光ダイオード (LED) 照射による植物の薬効・機能性成分の強化 (出願5、6、7)

植物由来の薬効・機能性成分は、経口摂取による生活習慣病の予防や改善に加え、化粧品として日焼け防止・若返り効果が期待される。シロイヌナズナを含むアブラナ科植物への LED 照射により、有効成分の合成を司る酵素の遺伝子発現が上昇し、有効成分の含量が増加することを見いだした。青色 LED は主としてポリフェノール類、赤色 LED はサポニン類のそれぞれの生合成および蓄積を促進した。

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