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執筆者の写真Hirokazu Kobayashi

日本の売り?*

更新日:6月19日

小林裕和

(株)グリーン・インサイト・代表取締役/静岡県立大学・名誉教授・客員教授

 

コロナ禍が終焉を迎えたと考えられる今年4月に至り、訪日月間客数がコロナ禍前を抜いて、304万人となった。訪日外国人消費額は、コロナ禍前の2019年の約10%越えの過去最高。皮肉にも円安が 「日本の売り」 になっている。


日本をどのように切ってもその特性は高いように思える。先ず統計的に切ってみよう。日本人の平均寿命は世界最上位に位置する。その要因は単一ではないが、食文化の貢献は大きい。動物性食品では魚類が多く、植物性食品とのほどよいバランス。併せて、文化でもある茶は健康にも有効。産業の観点からは、1800年代中期の明治初頭に西洋技術を取り入れ、30年足らずで当時の強国ロシアに対抗する国力を得た。これは、明治維新で活躍した先達の先見の明によるとしても、江戸時代を通じて育まれてきた庶民の高い知識・技術レベルが礎になったと考えられる。文化的には、700年代初頭の古事記、日本書記が記されるまで文字がなかったと言われるが、古来、神代文字と称されるものが存在し、さらに縄文土器や土偶の高い芸術性は高度な文明を物語る。1000年代に花開く平安時代には世界最古の長編恋愛小説 「源氏物語」 が描かれ、この時代に文化的に大きく停滞していたヨーロッパと好対照である。日本は自動車と家電製品の生産で世界を制したが、今は歴史遺産、食文化、アニメなどが、インバウンドという形を含めて、海外に発信されている。

 

このような日本の魅力を日本人なら知っていてほしいし、留学生を含め海外からの訪問者にも伝えたい。そのような趣旨で、静岡県立大学において2016年より、”Japanology” と言う講義を大学生向けに開設した。サブタイトルとして、地理と気候、人口減少と高齢化社会、方言、社会変化、経済、日本茶、薬草、世界最長健康寿命などを取り上げ、それぞれを専門とする教授陣が英語で講義した。選択科目としたため、日本人学生にはあまり人気がなかったが、外部の反応は良く、称賛の言葉をいただいた。これに気を良くして、このような題材を清水港に寄港する豪華客船の船客への講座やオンデマンド教材としてのインターネット配信を考えた。近い将来の事業化を目指している。




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