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  • 執筆者の写真Hirokazu Kobayashi

人類存続:その生物学的シナリオ!

更新日:2 日前

小林裕和

(株)グリーン・インサイト・代表取締役/静岡県立大学・名誉教授・客員教授

 

10190年を舞台にした映画 "デューン 砂の惑星 PART2" が今年3月に公開され、話題を集めている。これは、フランク・ハーバート (1920年〜1986年) により1965年に発表されたSF大河小説 “デューン砂の惑星” を原作とし、ドゥニ・ヴィルヌーヴ (1967年〜) 監督による映画化2作目。1作目は2021年公開。それまで何度も映画化が試みられたが、物語の重厚さや壮大な宇宙の表現が困難であり、ようやく実現した。その他にも、人類の将来については、漫画、アニメ、小説、映画、テレビドラマなどの媒体を介して、時代設定や視点を変え世に発信されてきた。当初はSFというジャンルでくくられ、産業の発展に裏打ちされた明るい未来が語られた。その走りは、雑誌 “モダン・エレクトリックス” に、1911年に掲載された連載小説に見出すことができる。1932年に発表されたオルダス・ハクスリー (1894年〜1963年) による “すばらしい新世界” は、機械文明の発達により繁栄を享受する人間が、自らの尊厳を見失うディストピア (反理想郷) の姿をユーモアと皮肉の文体でリアルに描いた。しかしながら、ディストピアは既に現実となっていた。1878年に足尾銅山鉱毒事件が起きている。その後、多くの公害問題が提起されていった。1952年にロンドンにおいて、石炭の燃焼、工場からの排煙、ディーゼル車からの排ガスなどが原因となり、濃いスモッグが発生した。その結果、呼吸困難などにより約12,000人が死亡し、多くの人々が健康被害を被った。また、1962年にレイチェル・カーソン (1907年〜1964年) により、農薬の乱用による環境汚染を告発した “沈黙の春” が発表された。これを皮切りに、フィクション、ノンフィクションを問わず、人類の将来像は産業活動に警鐘を鳴らすものとなっていった。日本発としては、有吉佐和子 (1931年〜1984年) の小説 “複合汚染” (1975年)、さらに宮崎 駿 (1941年〜) のテレビアニメ “未来少年コナン” (1978年) や映画アニメ “風の谷のナウシカ” (1982年) から始まると言える。なお、”未来少年コナン” は、アレグザンダー・ケイ (1904年〜1979年) の “残された人びと” (1970年) を原作とする。

 

レイ・カーツワイル (1948年〜) や他の未来学者は、技術的特異点 (シンギュラリティ) が2045年頃に到来すると予測している。これは、人工知能が人間の知能を超え、自己増殖的な進歩を遂げる時期を指す。この時期には、人類の生活や社会構造が劇的に変化するとされている。また、気候変動は21世紀を通じて人類に大きな影響を与えると認識される。国連の気候変動に関する政府間パネル (IPCC) の報告書では、温室効果ガスの排出が現在のペースで続けば、地球の平均気温が数度上昇し、これが極端な気象現象や海面上昇、生態系の破壊を引き起こすと予想されている。さらに、国連の予測によれば、世界の人口は21世紀半ばまでに90億人に達し、その後は減少に転じるとされている。高齢化社会の進展や出生率の低下が、経済や社会保障システムに大きな影響を与えると考えられる。

 

人類絶滅のリスクとして、過去における小惑星や彗星の衝突は、地球上の生物に甚大な被害をもたらした。こうした天体の衝突を監視・予測し、衝突回避の技術開発が進められている。2020年から今日まで、私たちが経験したようなパンデミック、さらに新興感染症が挙げられる。この予防と対策が求められる。また、核兵器の存在は、人類の生存に対する大きな脅威の1つである。冷戦期には核戦争のリスクが高まったが、現在も核兵器の拡散やテロリストによる使用への懸念が残る。

 

人類の進化は、約120万年前にホモ・エレクトスからホモ・ハイデルベルゲンシスに分岐し、約40万年前にホモ・デニソバンズとホモ・ネアンデルターレンシスが分かれた。約30万年前にホモ・ハイデルベルゲンシスから私たち “ホモ・サピエンス” が分岐した。その後ホモ・サピエンスは、ホモ・デニソバンズおよびホモ・ネアンデルターレンシスなどの遺伝情報の一部と混合した。この混合は従来の概念を覆すものであった。この業績に対して、マックス・プランク進化人類学研究所のスバンテ・ペーボ創立所長/沖縄科学技術大学院大学・教授 (1955年〜) が、2022年ノーベル生理学・医学賞の単独受賞に輝いた。ヒトの1世代を25年とすると、30万年間に12,000世代を経たことになる。この間に、ヒトの遺伝情報を構成する30億文字の遺伝暗号に変異が入って多様性を生み、現在に至る。


生物学における 「種」 の定義は、一義的には交配により子孫を残せること。最も長く生存してきた 「種」 として、いわゆる 「生きた化石」 と言われるものがいる。約4億年前、地球は古生代・デボン紀であった。ゴンドワナ大陸、ローラシア大陸、シベリア大陸があり、大陸棚の浅い海洋が拡がっていた。気候は温暖で安定していた。デボン紀は 「魚の時代」 とも呼ばれ、魚類の多様化が進んだ。当時からいた海洋生物としては、オウムガイ、カブトガニ、シーラカンス、ナマコを挙げることができる。約3億5千年前の石炭紀からペルム紀にかけての時代、植物ではシダ類、動物ではハエトリグモが出現し、現在までそれらは種としての特徴を維持している。これら 「生きた化石」 は、気候変動、大規模な火山活動、小惑星衝突、海洋の酸素不足の影響を受けなかった。これらは大きな進化的変化を伴わず、低い進化圧で生き延びた。すなわち、変化する環境への適応が生き残る術であるが、彼らは体の仕組みを変えずともそれを達成できた。

 

一方、道具を使う生物が現れた。軟体動物のタコは、ココナッツの殻や貝殻を使って隠れ家を作る。甲殻類では、ヤドカリは巻貝の殻に体を収めて生活する。魚類では、ラセクティッドラスが岩を使って貝を割る。爬虫類では、イグアナが葉を使って水を集める。鳥類では、カレドニアガラスが葉や枝を使って昆虫を捕る。また、ナッツを道路に置いて車に割らせる。オウムのガラカオオハシは、棒を使って餌を取り出す。哺乳類では、イルカが海底の砂を使って餌を捕らえる際に、鼻を保護するために海綿を使うことがある。カワウソは石を使って貝を割る。霊長類としては、チンパンジーが棒を使ってシロアリを捕ったり、石でナッツを割ったりする。オランウータンは、葉を使って雨を防ぎ、棒を使って蜂蜜を採る。カポチンザルは、石を使ってナッツを割り、葉を使って水を飲むなど。ヒトにもこのような行動が発達した。

 

道具を使う背景には好奇心が介在する。タコ、タラバガニ、イグアナ、イヌ、ネコは、新しい環境や物体に対して探索行動を示すことが知られている。アフリカ灰色オウムは、高度な認知能力を持ち、問題解決やコミュニケーションに対し強い好奇心を示す。霊長類は、高い知能とともに強い好奇心を持ち、新しい物体や状況を積極的に探索する。ヒトは、特に顕著な好奇心を示し、科学、芸術、技術など多岐に渡って探求心を示す。これは、変化する環境の中で生きていく技術に繋がる。

 

来たるべき氷期に備え、先ずは10万年単位で生き残るために、恒常的なエネルギー供給システムを開発しなければならない。そこで、自らを破滅させるような行為に至らないと言う前提において、人類には環境の変化を克服する術を編み出す力があり、したがって、地球上で生存し続ける生物学的な特性を秘めている。このような人類の叡智が生かされるなら、誕生後30万年の人類の歴史は、終わりに近いのではなく、未だそのプロローグにあると言える。

 



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